ドイツの強制収容所での経験と考察が綴られた「夜と霧」は、他の自己啓発本とは比べられない説得力をもって、私たちに人間らしく生きる方法を教えてくれます。多くの悩める人にとって、この本から得られる視点は財産となると考えています。
この記事では、「夜と霧」で示されている内容をできるだけ分かりやすい言葉で解説していきます。本書を読んだ人にも、まだ読んでいない人にも伝わるようにまとめたいと思います。概要的な説明は下の記事に載せています。
「夜と霧」の結論
どんなに苦しい状況でも、考え方・捉え方によって精神を強く持つことができ、個人の小さな命にも意味を与えられる。これが最も重要な結論です。
食事も睡眠も不十分な中で過酷な労働を強いられた時、最後に残るのは内面的な自由だけ。内面の豊かさを保つことができれば、物質的に貧しく身体的に厳しい状況でも、心を健全に保つことができるというものです。次の見出しから詳しく解説します。

内面的な自由
強制収容所のような全てを奪われる状況下でも、心の健康を保ち、仲間に対して人間らしい振る舞いが見られたと書かれてあります。全てを制限された絶望的な状況でも、どんな態度を取るかについては個人の自由であり、幸福と不幸を分かつのは、下のような考え方を持てるかどうかです。
「苦悩と死は人間の実存をはじめて一つの全体にする」
苦悩すら自分を形づくる要素で、それを味わい、この運命を背負うのも悪くないと思える境地に立つことが、精神的充実繋がるということです。
その例として、余命わずかの人がどう振舞うかが挙げられています。とある病床の少年は、最期の瞬間まで品位を持って生き抜く人を描いた映画を知っていて、自分にもそんな精神的高みに辿り着けるチャンスがあると手紙に書いたといいます。
もっと分かりやすく言うなら、病気のような不遇な目にあうのは意図しないことですが、それに悩み、人より短い人生を過ごすことも自分の一部であると受け入れ、最後の瞬間まで素晴らしい人生を生きようと試みることが大切という考え方です。
「苦悩に満ちた運命と共にこの世界でただ一人一回だけ立っているという意識にまで達せねばならないのである。何人も彼から苦悩を取り去ることはできないのである」
「運命に当たった彼自身がこの苦悩を担うということの中にのみ独自な業績に対するただ一度の可能性が存在するのである」
未来で自分を待つものがある
自殺企図を漏らした囚人は「人生から何ものも期待できない」と語ったという。ここで著者は、人生におけるあるものが未来において彼らを待っているということを伝えた。
愛情を注いだ・愛してくれる家族が未来で待っているということは、他人によって取り替えられないもので、仕事なども同じです。
「他人によってとりかえられ得ないという性質、かけがえないということは(中略)担っている責任の大きさを明らかにするものなのである。」
「待っている仕事、あるいは待っている愛する人間、に対して持っている責任を意識した人間は、彼の生命を放棄することが決してできないのである」
このことで、自分の存在意義を知り、堪え難い苦難にも耐え得ると綴られています。
「人種」は善意を持った人と悪意を持った人に分けられる
民族や国家というグループには、善意の人だけを集めたグループは存在せず、その意味で純血はあり得ないというもの。隣国との揉め事は尽きませんが、隣国の中にも様々な考え方の人がいます。思想の違いで国や地域の対立が起こる世界情勢さなか、平和を考える上で忘れてはいけない真理の一つだと思います。
読まなければ受け取れないメッセージ
ここまで印象に残った言葉をまとめてきましたが、実際に読むことに勝るものはありません。まだ読んでいない人は、ぜひその手でページをめくり、ヴィクトール・フランクルのメッセージを受け取ってください。
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