公開前に話題になったのは、作品の豪華出演者やシリーズの面白さはもちろん、出演していた三浦春馬が公開直前に亡くなったこともそうだった。同世代の彼に対する親近感と、繊細な演技やテンポのいいおもしろ演技、誠実な眼差しへの憧れ。他の有名人の死よりも僕にとってショックなことだった。それはもう食欲が落ちるほどに。だから、コメディなのに途中で悲しくなったりしないかと不安に思いながらも、この連休を逃したらなかなか映画館に足を運ぶ機会もないだろうと、何かと理由をつけて家を出た。
ダー子がどんな風に騙してくれるのか、どうやって僕たちを笑かしてくれるのか、でも三浦春馬を見たらどんな気持ちになってしまうのか、早く映画が始まってほしいと思った。気合が入って早く到着したので、上映されるスクリーンの席にはまだ誰も座っていなかった。
映画が始まれば一瞬で夢中になった。やはり映像、音楽、脚本どれも丁寧な作りで、シリーズ通して芸能人や世間に対するシニカルなセリフがツボだ。最初に張った伏線を見事回収して、重たい腰を上げて映画館に出向いただけはある大満足な内容だった。
特に心を奪われたのは、執事のトニーを演じる柴田恭兵の演技だ。表情や所作は洗練されていて、セリフが無くとも見る者に意味を伝える、俳優という職業の魅力を感じた。当然脚本が良いというのもあるが、トニーという人物の持つ慈愛とか誠実さが際立っていて、この映画の良さの1つだと感じた。本来コメディー映画のはずなのだが、今作はそれだけにとどまらない面白さがあったので、ぜひ興味がある人は観て欲しい。
あと、映画館がコロナウイルス対策で席の間隔を空けていたのがグッジョブ。隣の人の動きが視野に入ることがなく、集中して快適に映画を楽しめる空間だった。コロナウイルス関係なくやって欲しいというくらい、神経質な人にはありがたいシステムになっている。意外とおすすめだ。
最後に、楽しそうに演技する三浦春馬が登場するたびに、この人は作品の中でずっと生きているんだと安心する気持ちが湧いてきて、安心すると涙が出てきた。全く感動するシーンではなかったのに涙ぐんでしまったのは僕だけじゃないはず。同じ世代、兄弟くらいにしか歳が離れていないのに随分大人びたたたずまい、芸能界で躍進する彼がうらやましかったのだけれど、悩みは取り憑く人を選ばないらしい。夢を見せる人がいつでも夢見てるとは限らない。
そんなこんなで4連休はあっという間に過ぎてしまい、どこにも出かけることができなかった僕は先日の腹痛から再びコロナに翻弄される日々が続いている。
コメント